歯肉縁下カリエスを抜歯しないで治療

 

 治療方法は、理屈では難しくありません。歯を引っ張り出して歯茎より上にもってくるか、周りの歯茎や骨を下げることで歯が上にくるようにするかのどちらかです。また、歯の内部で大きく虫歯が広がって穴が開いた状態(穿孔といいます)の場合には、穿孔封鎖を行うこともあります。
 通常は自費診療になりますが、軽度の歯肉縁下カリエスですと、保険診療の範囲内で工夫して歯を残すこともできますので、簡単に諦めずにご相談ください。

歯肉縁下カリエスを抜歯しない治療方法

(1)矯正的挺出:部分矯正を行って、歯を引っ張り出します。

(2)外科的挺出

 (2)-1 フラップ手術:歯茎を切開、剥離して、骨を削って歯より低くして、歯茎の形態を整えます。

 (2)-2 歯肉切除:歯茎を切って歯が見える状態にします。

穿孔封鎖:歯の内部の穴をふさぎます。必要に応じて上記と併用します。

 (1)の矯正的挺出は、メスを入れないことが長所です。主な短所は、矯正治療ですので時間がかかることと、口の中に装置が入るために不快感があることです。時間はかかっても良いので手術したくないという方にお勧めです。極端に深い場合には外科処置の併用が必要になる場合があります。

 (2)-1のフラップ手術は、歯茎を切って、めくって、骨を削って、歯茎を戻して糸で縫う、という手術です。話を聞いただけで嫌になった方もいらっしゃると思います。短所は、(患者さんの立場では)大がかりな手術になること、術後腫れることです。長所は、矯正よりは短期間に終わることです。

 (2)-2の歯肉切除は、もっとも簡単な方法です。長所は、最も短期間で終わること、術後も軽いやけど程度で痛みや不快感が少ないことです。短所は、すぐに歯肉が増殖してくるために清掃がしにくいことと、浅い歯肉縁下カリエスの場合に限ることです。当院の場合は、この方法を選択される方が多いです。

 実際の治療方法は、歯根の長さ、歯茎や骨の状態、咬み合わせ、清掃状態、全身疾患、患者さんの生活への影響、患者さんが絶対譲れない条件などを総合的に考えて決めていきます。正解は人それぞれで、万人に共通の正解はありません。セカンドオピニオンでの受診も歓迎します。

歯肉縁下カリエスの治療例1:矯正的挺出

 隣の歯を支柱にしてワイヤーを装着し、歯にフックを取り付けて引っ張ります。

 1か月ごとくらいで調整が必要です。深さによっては2~3年かかることもあります。

 

 

 

 

歯肉縁下カリエスの治療例2:歯肉切除と穿孔封鎖

 このレントゲンは、当院で歯肉縁下カリエスと穿孔の治療後に撮影したものです。

 歯の内部に黒くうつっている部分に元は虫歯があり、歯の内部に穴が開いていたことと、向かって右の方は歯茎の下に虫歯がある歯肉縁下カリエスが大きな問題でした。この患者さんは、他の歯科医院や大学病院も受診されましたが、症状が出るまでおいておくか抜歯しかないと言われて、相談にいらっしゃいました。

 虫歯を丁寧に除去していって、特別な材料(レントゲンには黒くうつっています)で封鎖をしました。虫歯が大きく広がっていましたので、歯の内部から歯茎や骨が見えてしまう状態で、通常は抜歯です。

 何もしない場合、この歯を残す場合、抜歯した場合(抜歯後に歯を補う治療方法も含みます)の3つの治療方針の長所短所をご説明し、よく相談したうえで、歯を残すという選択をされました。治療後は、強くかみしめると違和感を感じるけれど普段は何ともないと言われています。多忙な方で、不定期ですが、メンテナンスにも通っておられます。この文章を書いている時点で4年くらいになりますが、問題なく経過しています。

 ここまで重度の歯肉縁下カリエスと穿孔でも、歯科医師の技術と創意工夫に患者さんの理解があれば、抜歯しないで残すことが出来ます。歯を1本抜くことで、咬み合わせのバランスが変わってしまいますし、他の歯の負担が増えて寿命を短くしてしまいます。前歯の場合は、精神的ショックも大きくなります。歯は簡単に抜いてはいけないのです。

ここがポイント!

 高い技術があること、多少のリスクを取ること、そして、よく考えて現実的な治療をすることが大切だと思います。
理想的な条件でクラウン(かぶせ)を装着できるケースは案外少ないのです。部分的に歯がとても薄いとか、多少歯肉縁下にマージン(歯とクラウンの境界)がくるとかいうことは珍しいことではありません。100点の状態でクラウンをいれるか、それが叶わないならば抜歯をする、という2つの選択肢で抜歯を選ぶのではなく、例えば70点のように、まあまの状態でクラウンを入れて歯を残すという選択肢を加えます。経験的には、多くの患者さんが、まあまあの状態で歯を残す選択をされ、定期受診されている方については、短命に終わることは滅多にありません。歯肉縁下にクラウンを入れる一番のデメリットは、汚れがついたら取れない事だと思います。それを補うように、早めにプロのケアを受けることで、デメリットの影響を最小限にできます。

歯肉縁下カリエスの相談のご予約は、こちらへ 06-6170-2983 おおの歯科(大阪府吹田市佐井寺)

*検査と説明で60分くらい必要なことがあります。遠方の方は特に、歯肉縁下カリエス の治療相談ということをお申し出ください。

受付時間等をご確認ください。

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