歯根破折を抜歯しない治療~おおの歯科(大阪府吹田市)

歯根破折した歯を抜かないで保存する

 このホームページをご覧頂いている方は、かかりつけの歯医者さんから、「歯が割れているので抜くしかない」「歯にヒビが入っているので抜歯しかない」などという説明を受けて、本当に抜かなきゃいけないのかな?と思ってらっしゃるのではないでしょうか。歯が割れたのであれば接着すればよいだけです。ただし、人の体の一部で、歯茎や骨の中の出来事で、水分の多い場所で、接着しても力がかかるから、難しいのです。
 多くのケースは、しっかり情報を集めて、よく考えれば、保存することが出来ますので、抜いて後悔する前に、ご相談いただければと思います。


歯根破折の診断は実は難しい

 歯根破折という確定診断をするためには、目で見て割れていることを確認する必要があります。歯根は骨の中に埋まっていますので、直接確認することは困難ですから、やむをえず誤診も起こってしまうのが現実です。

 歯根破折の治療を目的に当院を受診される患者さんによくあるのは、「深い歯周ポケットがあるので歯根破折です」、「根管治療しても治らないので、たぶん割れています」、「レントゲンで破折線があります」と言われるパターンです。

 レントゲンの黒い線につきましては、決定的な証拠のように思われているようですが、破折の方向と放射線の入射角度が一致しなければ写りません。写ったら奇跡とまではいいませんが、写らないことの方が多いと思って診断を進めます。黒い線がうつったとしても、アーチファクトであったり、隣の歯根が重なって写っているだけであったりすることもあります。レントゲンの読影は案外難しいものです。レントゲンで診断が困難な場合はCTで確認をします。

 いずれも、歯根破折のときに見られる症状や検査結果のひとつですが、それだけでは診断が困難なことがあります。歯根破折と言われたら、診断から治療まで、当院にお任せください。


歯根破折の治療

歯根破折を治療する方法は以下の通りです。どの治療方法が適するかは、主に歯の状態で変わってきますし、何番の歯か、どのくらい力がかかるのか、歯の植立状態といった条件で変わってきます。様々な検査をしてご説明しています。

(1)口の中で接着する方法 

 (1)-1:歯の内部から接着する方法:根管治療と似たような方法です。

 (1)-2:歯の外部から接着する方法:歯茎を切開して、肉芽の掻把も行います。

 (1)-3:歯の内部と外部から接着する方法:上記2つを同時に行います。当院では最も成功率が高いです。

(2)一旦抜いて接着する方法:口腔外接着法、意図的再植などと表現され、一旦抜いて接着して口の中へ戻します。

歯根破折と誤診された例1:歯根破折ではなくて、ややイレギュラーな歯根形態であった

 地域で人気のある有名な某歯科医院を定期受診されていた(患者さんの話)方ですが、ある日、「歯根破折なので抜歯してインプラントするしかありません、次回CTの検査をします」と言われて、焦って駆け込んで来られました。

 歯周ポケットは局所的に深く、歯根破折でよくある症状のひとつは満たしています。しかし、レントゲンを見たときに、すぐに誤診だと分かりました。歯の解剖学とレントゲンの読影ができれば、これを歯根破折と診断することはないはずです。実際のレントゲンでご説明します。

 初診時のレントゲンです。左が生データ、右が解説用です。
歯根破折と診断されたのは赤い矢印の左上1番の歯です。黒い矢印の右上1番の歯と比較すると、歯根が短く、赤線2本の位置に黒い線があるのが分かります。憶測になってしまいますが、この斜めの線を破折線と間違えられたのではないかと思います。
 当院の診断は、歯根破折ではなくて、そういう歯の形態です。上顎1番の歯が、たまたま、上顎2番っぽい形態だっただけです。上顎2番の歯ですと時々あるのですが、斜切痕という細く狭い溝が破折線っぽく写っているだけです。斜切痕という溝に沿って深い歯周ポケットが形成されて、そこへ細菌感染が起こり、歯肉が腫脹したと診断しました。

 この方のその後ですが、当院で歯肉を切開して斜切痕を埋めて、深い歯周ポケットも腫れもなくなりました。この文章を書いている時点で4年くらい経過していますが、不都合なく生活していただいています。治療結果から、歯根破折ではなく斜切痕を原因とした感染であったことがはっきりしました。

 このような間違いをしないためには、基本的な知識が多いことと、それを元にして何パターンも考えることが重要です。上顎1番の歯に、はっきりとした斜切痕があることは稀ですが、隣と比べて明らかに歯根が短いことも踏まえると、原因は不明ですが、2番っぽい1番だっただけだと気付くはずです。


歯根破折と誤診された例2:歯根破折ではなくて、破折ファイルが原因の根尖性歯周炎であった

 他院で歯根破折と診断された30歳代後半の方です。この方の場合、電話で少し話をして、歯根破折じゃないような気がします、とお伝えして受診いただきました。

(注)この写真のみ口の内側から撮影していますので、レントゲンとは左右が反転しています。
 治療前です。歯周ポケットが1箇所のみ非常に深いことが分かります。これは、歯根破折の特徴のひとつです。この写真だけを見て診断するのであれば、歯根破折の可能性が高そうですが、患者さんの年齢が若いこと、口の中全体に大きな力のかかった形跡がないことなどから、この時点で、割れてないんじゃないですか、という話をしています。

 

 

 問診から始まって、視診、触診、歯周検査と進めていき、レントゲンを撮影しました。
 黒い矢印の部分は、歯の周囲が炎症を起こして黒くなっています。赤い矢印の先には、直線的で細くて白いものがうつっています。人の体に直線はありませんので、人工物と考えて、ほぼ間違いありません。おそらくは、破折ファイル(根管治療に使う器具)です。非常に細い破折ファイルであることから、根管治療を開始して間もなく折れてしまったと思われ、根管内の清掃ができていないままになっていると推測されます。 歯根破折がないという根拠にはなりませんが、歯根破折を疑う所見が少なすぎます。破折ファイルを除去して根管内を清掃すれば治る可能性があります。明らかに悪いところから治療を始めていって、それでも治らないときには、もう一度歯根破折を疑うという治療計画を立案しました。

 ここからは、歯根破折では無かったのですが、この方がどのような治療で治ったのかをご説明します。歯根破折以外に興味のない方は次の項まで飛ばしてください。

 破折ファイルを除去しました。黒い矢印部分の炎症はまだそのままですが、根管内を清潔にした状態で経過観察をしました。 処置の前には、患者さんのご希望でCT撮影をしまして放射線の専門医にも確認をしましたが、当院と同じで、割れていないだろうという意見でした。

 

 

 

 根管充填をした時のレントゲンです。黒い矢印の先にあった、レントゲンに黒くうつる部分がなくなり、歯周ポケットも改善し、炎症がなくなりました。根管充填をしてから念のために経過観察をし、クラウンをかぶせて終了しています。
 この文章を書いている時点で2年半くらいですが、問題なく経過しています。今回のようなケースの破折ファイル除去費用は3万円(税別)です。抜歯をしてインプラントと比較して天然の歯が残りますし、かぶせまで入れても費用が安く済みます。この処置に特有の重大な副作用の報告はありません。

 

 

 歯根破折は、歯科医師の間で近年話題になっていますので、診断されることが増えていますが、今回のケースのように診断がやや難しいこともあります。穴があいているから埋めておこう、歯石があるから取っておこう、というだけの診療をしていると診断は困難なのではないかと思います。ひとつの所見で短絡的に診断をするのではなく、多くの知識とよく考えることが重要です。レントゲンでみて大きく割れているような場合を除けば、状況証拠を積み重ねなければ診断は難しいのです。当院は、問診の段階からしっかりと時間を確保して、多角的に情報収集をして、よく考えて診断をするようにしています。


歯根破折を抜歯しない治療例1

 他府県から歯根破折と診断されて受診された方の左下7番目の歯です。

 他院で仮詰めがされたそのままの状態でレントゲンを撮影しました。歯周ポケットが深かったですし、広範囲に骨がダメージを受けています。

 

 

 

 仮詰めを外してみますと、目視で破折線を確認することが出来ました(矢印の先)。今回は、歯の内部から徹底的に清掃をして、破折の補修を行いました。他の箇所が割れにくいように予防処置も行っています。

 

 

 

 治療後1年4カ月のレントゲンです。初診時は骨がダメージを受けていました(レントゲンで黒くなる)が、白く回復していることがはっきりわかります。根管内は、一般に使われるガッタパーチャとは違う材料を使用しましたので、黒くうつっています。
 この文章を書いている時点で3年半を超えましたが、特に問題なく生活していただけています。問題ありませんので被爆を最小限にするために最近はレントゲンを撮影していません。歯の内部からの歯根破折の補修は3万円(税別)で、根管治療やコアやクラウンは別途費用が必要です。抜歯をしてインプラントをされるよりも安いですし、天然の歯が残ります。この処置に特有の重大な副作用の報告はありません。

 歯根破折や根管内への再感染を起こしにくいようにクラウンを入れていくところも大切です。また、力のかかる方はナイトガード(寝るときのマウスピース)を使ったり、定期的なメンテナンスも重要になります。


歯根破折を抜歯しない治療例2

 40歳代の男性です。他府県の方で、他院で治療を受けておられたのですが、歯が割れているので抜歯してインプラントしか方法がないと言われ、他の部位も含めて300万円くらいの見積書を持って、本当に必要な治療か相談に来られました。

 初診時です。咬耗の状態から、著しい歯ぎしりをされていることが予想されました。問題は左上1番目の歯なのですが、写真の向かって左隣に見える右上1番目の歯と比較して、クラウンが長く、下の歯と干渉していたのではないかと推測されます。歯周ポケットは局所的に極端に深くなっています。
 この状況ですと、ほぼ間違いなく歯根破折と診断できます。

 

 

 

 レントゲン撮影等の検査を済ませて、歯根破折の治療途中です。骨が見えていますので、歯の周囲は画像を加工しています。歯茎を開いてみると、縦に大きく明らかに割れており、歯根破折を起こした部分の歯槽骨(歯を支える骨)は無くなっていました。

 

 

 

 

 歯根破折を修復した状態です。骨が見えていますので、歯の周囲は画像を加工しています。炎症性の肉芽組織や歯の汚染された部分を丁寧に取り除き、割れた部分を埋めていきます。埋める材料の選択や埋め方がポイントになります。この時、別の箇所が割れないように予防的な処置も行っています。この後、歯茎を元に戻して縫合して、コア(さし歯の土台)をつくって、仮歯を入れました。

 

 

 

 仮歯で経過観察を行いまして、歯周ポケットを調べますと、健康な状態に戻っていました。手術が必要になる場合の費用は5~12万円(税別)になります。破折の状態や使用薬剤によって費用が変わってきます。コアとクラウンは別途費用が必要です。この治療では歯茎を切開して骨にもアプローチをしますので、持病のある方は治療が出来ないかリスクが高いことがあります。また、メスを入れることで、感覚の異常が残ることがあります。ケースバイケースですので詳しくは診察時にご説明します。

 仮歯で経過観察を行った後、ファイバーポストコアとセミプレシャス金属を使用したメタルボンドクラウンを使用し、夜間はマウスピースを使用していただいています。

 この患者さんの場合、歯ぎしりなどで元々歯が割れやすいのですが、金属の土台が使用されていたこと、金属の土台が不安定な状態になっていたこと(コアの項でご説明します)、クラウン(かぶせ、さし歯)が長すぎたことが、歯根破折の原因にあったように感じます。歯ぎしり以外は、歯科医師がより良い方法で精密に治療をしていればリスクを下げることが出来たはずです。最初からうちに来てくれていれば、、、と思ってしまう症例でした。

 ちなみに、この方が持ってこられた300万円の治療見積もりの内容ですが、歯根破折を抜歯してインプラント以外に、さほど問題のないメタルボンドのブリッジを除去してインプラントにする等でした。当院の感覚では、医学的には正しいものの、患者さんが必要としている治療というよりも、歯科医師がやりたい治療をお勧めしているのではないかという違和感を感じました。歯根破折に限らず、どんな治療方法が良いのか分からない方は、時間をかけてお話をする中で、あなたに最適の治療方法を探していきますので、当院へご相談ください。

歯根破折の相談のご予約は、こちらへ 06-6170-2983 おおの歯科(大阪府吹田市佐井寺)

*検査と説明で通常60分くらい必要です。遠方の方は特に、歯根破折の治療相談ということをお申し出ください。

受付時間等をご確認ください。

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