ブログもどき:現役歯科医のぶっちゃけトーク

 ブログを定期的に書くのは難しいと思いましたので、ブログのような形という意味でブログもどきです。
 忖度は(ほとんど)なしに、診療時間では伝えきれないことを伝えたいと思います。
私が日頃考えていること、気になること、これはおかしいと思うことなどを、多くの方に知っていただきたいというのが主な目的です。
長い文章が多いですが、診療と同じように、丁寧に誤解のないように伝えるためですので、一部の文章の切り取りではなく、文章全体を読んでいただくようにお願いします。
できれば、これを読んで、私の意見に賛同された方の受診が増えてほしいなあという思いもあります。

ご注意:出典を明記しないで二次使用しないでください。

おおの歯科 ブログもどき 目次

歯肉縁下カリエスの治療:工夫すれば残せます

資格と仕事内容:歯科衛生士、助手が印象採得(型取り)してもいいの?

資格と仕事内容:歯科助手は良くて、歯科技工士はダメなのは変じゃない?

猛暑から診療材料を守る工夫~室温保存って?~

白衣は不潔

昼の休憩2時間に何をしているのか

歯科医院で新型コロナのクラスターが発生していない理由の考察

歯肉縁下カリエスの治療:工夫すれば残せます

 歯肉縁下カリエス(縁下カリエス)といって、歯茎の下まで虫歯が進行して、横から見たときに歯が見えない状態になると、通常は抜歯です。抜歯しなければいけない理由は、治療自体が困難で、残したとしても長持ちしないことが予想されるからです。

 歯にクラウン(かぶせ)をして残すためには、歯茎の上に1mmくらいは歯が見えていないといけないことになっています。歯茎の中に埋もれた歯は、歯肉溝浸出液という液体が出てきますし、歯茎に隠れてしまいますので処置が困難で、残したとしても磨けなかったり歯茎は腫れやすかったりで、あまり良いことが起こらないからです。

 先ほど説明しました通り、歯肉縁下カリエスを抜歯するようになる理由は、歯茎の上に歯がないからです。ということは、歯茎の上に歯がある状態をつくれば、抜かなくてよいわけです。

 歯肉縁下カリエスを抜かないで治療する方法は、大きく分けて2つあります。(1)歯茎の中から歯を引っ張り出す方法、(2)歯の周りの歯茎や骨を下げる方法です。どちらの方法も、相対的に歯茎より歯が上にある状態をつくります。どちらが良いかは諸条件ありますので、検査をして詳しくご説明します。これら2つは自費診療になりますが、保険診療だけで何とかしてほしい方には、あれこれ工夫すると歯を残すことが出来る場合もありますので、一度診せてください。

 歯肉縁下カリエスの治療は、歯科医師目線で100点の状態にはなりませんが、多くの場合、患者さんにとって実用上問題のない状態で歯を残すことは出来ますので、ぜひご相談ください。

 診療内容のページに治療方法の説明がありますのでご覧ください。

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資格と仕事内容:歯科衛生士、助手が印象採得(型取り)してもいいの?

 資格と守備範囲ということですと、私が知る限り、歯科衛生士が印象採得(歯の型取り)をしてはいけないと解釈できる法律は存在しないようです。
 歯科助手(国家資格無し)が印象採得をするのは良いのでしょうか。歯科衛生士法で定められた業務は、歯科における予防、保険指導、診療補助の3つです。厳しく解釈すれば、診療補助は歯科衛生士の仕事であって、歯科助手がしてはいけないような気がします。現実的には、グレーということで行っている診療所もあるようです。法律に詳しいわけではありませんので、専門家の方が読まれて明らかな間違いがありましたらご指摘ください。

 ここからは、違法かどうかの話ではなく、現実的にどうなのか、私個人の考えとしてお聞きください。

 違法かどうかは別として、歯科助手(国家資格無し)に印象採得(歯の型取り)をさせるのはダメだと思います。私がダメだと思うのは、(1)安全性、(2)精度、(3)資格の価値の3つの点からです。

 まずは、(1)安全性です。印象採得を失敗した時、最悪の場合、死につながるからです。ご経験のある方も多いと思いますが、印象材は、はじめはドロドロしていて次第に固まっていきます。もし、喉の方へ流れ込んで固まってしまったら、最悪の事態は窒息ですし、高齢の方が小さな欠けらでも誤嚥しますと誤嚥性肺炎を起こして亡くなるかもしれません。そうなると患者さんと家族が一番困りますし、当事者の歯科助手は人を死なせたという思いを一生抱えることになります。歯科助手は国家資格がありませんから責任を取れませんので、当然、指示をした歯科医師の責任になります。万一の時、関係者全員が不幸になるのです。

 次に、(2)精度の問題です。印象採得は、口の中の歯の形を三次元的にそのまま記録することが必要です。僅かでも歪んではいけないのです。気泡が入らないように口の中へ印象材を入れて、絶対に動かさないようにしなければなりません。気泡を入れない、動かさない、これが意外に難しいのです。患者さんは生きています。呼吸は止められませんし、唾液はたまりますし、嘔吐反射を起こす人もいます。どんなに協力的な患者さんでも、絶対に、多少は動くのです。解剖学をはじめとした医学知識があると、どこを抑えたら良いかのポイントがわかります。型取りの精度が悪いと、実際の歯と大きさや形が違った歯の模型が出来上がってしまいます。本物と違った形の歯の模型で作った被せ物などは、模型上ではピッタリ合っていても本物の歯には合わないことになります。歯に入らない、もしくは、ぶかぶか、という事態になり、調整(というか誤魔化し)して歯に入れるまでに、あちこち削ってやたら時間がかかってしまいます。歯とピッタリではなくスカスカにして接着しても、すぐに外れたり、早く虫歯になったりといったことが起きてしまいます。

 最後に、(3)資格の価値の話です。この話は、患者さんではなく歯科医院の院長向けです。 資格がなくても、ちょっと教えてもらえば印象くらい出来るとなると、頑張って取得した歯科医師や歯科衛生士の資格の価値を下げてしまうことになると思いませんか。既得権益は守った方がいいです。歯科医師と歯科医院が増えたことで、歯科医師の生活は苦しくなってしまいました。誰でも出来るのではなくて資格が無いと出来ないことが多い方が良いと思いませんか。自らの資格の価値を下げるような働かせ方はやめていただきたいなと思います。

 ここまでは歯科助手に印象採得(歯の型取り)をさせるデメリットを上げてきましたが、メリットを考えてみましょう。何かメリットがあるからそうしているはずです。
過去に勤務した歯科医院では、歯科助手に印象採得だけでなく、明らかな法律違反も含めて様々な診療をさせていた院長もいました。その経験から、私の推測では、(1)増益と(2)安定雇用がメリットです。

 (1)増益の話からです。利益を増やすことを考えると、同じ仕事であれば時給の安い人にやってもらう方がよいのです。これは悪いことではありません。歯科医師が印象採得をするなんて、経営効率だけを考えたら、かなりの無駄です。

 次に(2)安定雇用の話です。ある診療所の院長は、歯科助手に「やりがい」を与えるためと言っていました。人を募集して育てるのは大変です。よい従業員には長く働いてもらいたいと思います。それ自体は悪いことではありませんが、頑張って資格を取った歯科衛生士や歯科医師の立場はどうなるのでしょうか。表向き良いことを言って、人件費削減、効率重視なのではないかと疑問に思っていました。

 そろそろ、まとめましょう。
歯科助手に印象(型取り)をさせるメリット :増益、安定雇用
歯科助手に印象(型取り)をさせるデメリット:安全性、精度、資格の価値
(メリット)ー(デメリット)=??
??はプラスになりましたか、関係者の誰もが幸せですか。
私の計算では大きなマイナスです。非常に稀に取り返しのつかないマイナスになるかもしれません。

 最後に宣伝です。
当院は、歯科助手が口の中に手を入れることはありません。
経営の効率が悪くとも、安全第一で精度の高い歯科医療を行っています。

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資格と仕事内容:歯科助手は良くて、歯科技工士はダメなのは変じゃない?

 資格に関する話の第二弾です。歯科衛生士の仕事の反響が良かったものですから、調子に乗って、今回は、大規模な歯科医院で働いていた時に変だなと思っていたことを書きたいと思います。

 歯科助手、カウンセラー、コーディネーターといった国家資格はありません。民間の会社などが認定しているだけです。歯科医療に特化した国家資格は、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の3つです。

 歯科技工士の免許があると、差し歯や入れ歯などを作っても良いことになるのですが、あくまでも模型上だけで、患者さんの口の中へ手を入れてはいけないことになっています。患者さんの口の中へ手を入れる、器具を入れるというのは、一歩間違えば大きな事故につながります(下手したら死にます)ので、厳しくなっているのだと思います。

 繰り返しになりますが、歯科技工士という国家資格を持っている人でさえ、患者さんの口の中で作業をすることは許されていません。国家資格なしの歯科助手に患者さんの口の中を触らせるのには大きな抵抗があります。

 ところが、歯科助手に型取りをさせたり、咬み合わせを調べさせたり、仮歯を外させたり、といったことをしている診療所がけっこうあるようです。他の項でもお伝えしましたとおり、同じ仕事なら時給の安い人にしてもらった方が儲かるというのが一番の理由ではないかと考えています。歯科助手のモチベーションのためという理由を挙げていた歯科医師もいましたが、一番の理由ではないような気がしています。

 当院は、歯科医師、歯科衛生士以外が口の中を触ることはありません。直接はもちろん、器具を介して間接的に触ることも禁止です。患者さんを守るためと、資格の価値を落とさないためです。

 数をこなして利益追求、経営第一ではなく、借り入れの返済ができて、自分の家族が多少の贅沢が出来て食べていけたらいいかな、くらいでやっています。きちんと、まじめに診療していますので、考え方の合う方がいらっしゃいましたら当院を受診ください。

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猛暑から診療材料を守る工夫~室温保存って?~

 近年の猛暑は凄まじいものがあります。当院は、コンビニを改装した歯科医院ですので、大きなガラス窓があります。試したことはありませんが、エアコンなしですと室内はかなり高温になることが予想されます。
 診療に使う材料は全て保管方法が決まっています。冷蔵庫で保管する場合は、冷蔵庫の故障や長時間の停電がなければ問題ありません。室温で保管する材料がかなり多くありますが、他の診療所はどうされているのでしょうか?
 当院は、休診日でも「夏場は冷房つけっぱなし」です。
 室温保存というのは、上限が「30℃以下」のことが多いようです。近年の猛暑に限らず、大阪の夏で気温が30度を超えないことは無かったと思います。
 CO2排出や電気代等の問題はありますが、患者さんの口の中へ使うものが安全であることが最優先なのは言うまでもありません。
 察しのよい方はお気づきかもしれませんが、冬に氷点下になるような時には暖房つけっぱなしにします。
 言われてみれば当たり前、たいして難しいことではないのですが、「ちょっと考えてみる」「ちょっとした工夫をする」ことを大切にしています。

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白衣は不潔

 街で買い物をしているときに、白衣を着た人が買い物していたり歩いたりしているのを見かけたことはありませんか。私が患者ならば、そこの医療機関を受診したいと思いません。なぜならば、白衣は不潔である可能性が高いからです。
 歯科医師が歯科治療をすると、患者さんの血液や体液が霧状になって飛んできます。診療のアシスタントも同じです。白衣には細菌やウイルスなどの病原体がたくさん付着していると考えた方がよさそうに思いませんか。人類が発見していない未知の病原体も含まれていると思います。白衣で買い物に出かけたからといって、直ちに周囲の人を感染させるということにはならないでしょう。しかし、そのような医療機関ですと、他の衛生管理ができていないのではないかと疑ってしまいます。
 往診は除きますが、白衣のままで外出するスタッフのいる医療機関は受診したくないなあと、いつも思うのでした。

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昼の休憩2時間に何をしているのか

 歯科医院の昼休憩は2時間くらいのところが多いようです。当院も平日は2時間です。
 歯科医師をする前、会社員をしていたころは、「病院は昼休みが長くていいなあ。2時間もあれば、思いっきり昼寝をするとか、銀行みたいに平日にしかできない用事を済ませるとかできるのになあ。」と思っていました。ところが、現実は、なかなか休めません。
 まずしなければいけないのは、印象という歯型をとったものに石膏を流し込んで模型を作ります。技工指示書といって、どんな歯や入れ歯を作るか歯科技工士に依頼する書類を書きます。器具の洗浄、滅菌もします。診療時間中には十分に書けなかったカルテをしっかり書きます。診療中に撮影したレントゲンや写真の見直しをして見落としがないか、改善点はないか、反省会です。取引先の業者さんの訪問もあります。院長になると、経理もしなくてはいけません。最新の知識を 勉強もしなくてはいけません。午後の診療の準備も必要です。
 実際は、5分くらいで昼食をとって、仕事していることがほとんどです。患者さんには しっかりと咬むように言いますが、、、。やることが多すぎて2時間では足りません。歯磨きする時間もないくらいです。
 もしかすると、スタッフの多い歯科院や要領のいい院長はこんなことはないのかもしれませんが、私の昼休みはこんな感じです。

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歯科医院で新型コロナのクラスターが発生していない理由の考察

 大阪府の吉村知事が「大阪府の歯科医院では新型コロナウイルスのクラスターが発生していない」という発言をされたことがあります。新型コロナウイルスが得体のしれないウイルスであった時期には「歯医者は危ない」という報道が多かったように思いますが、実際には違ったということになります。その理由を考えてみました。

(1)小規模な歯科医院が多い
 説明の必要はないかもしれませんが、歯科医院は少人数のスタッフで運営されていることが多いため、スタッフのクラスターが発生しにくいのだと思います。

(2)患者さんの数が少ない
 内科などでは、医師の診察後に看護師が処置を行うことが多いのですが、歯科の場合は、歯科衛生士の業務範囲はかなり限定されていますので、多くの処置を歯科医師が行うことになります。(当院のように精度を重視して法令遵守していれば、ですが。)私の場合、診療時間8時間に丁寧に診療を行うと、15人程度までが時間と体力の限界になります。
診療所に出入りする患者さんの人数が少なければ、クラスターは発生しにくくなります。

(3)感染対策に慣れている
 新型コロナウイルス感染症以前より、歯科治療は様々な病気をもらいやすいという認識で感染対策しています。ウイルス性肝炎やエイズなどはもちろん、未知の病原体というリスクにも備えて対策をしていました。今回、それらを強化、徹底しただけで、基本的な方法は大きく変わりません。白衣にも自分にも病原体が付着している可能性が高いという意識で行動していますので、白衣のまま買い物に出かけるようなこともしませんし、控室へ入るときは白衣を脱ぐようにしました。私の場合は、基礎研究をしているときに病原微生物を扱っていましたので、特に慣れているということもあると思います。他にも、ずっと前からの私の ちょっとした工夫なのですが、患者さんと話をするときに、正面には座りません。患者さんが緊張しないようにという配慮もあるのですが、飛沫感染しないようにするためでもあります。

(4)患者さんの協力
 最初の緊急事態宣言の時に、歯科治療を一時中断される方が多くいらっしゃいました。後に話を聞いてみると、感染したくないというだけでなく、「先生にうつしたら申し訳ないので控えました」という言葉も多くいただきました。「今は何ともないけれど、昨晩熱が出た(のどが痛い等も)ので念のためキャンセルして2週間経過したら予約します」というような連絡も多くいただきました。そういった方は、普段からしっかりと感染対策をされているのだろうと想像しています。待合室でマスク無しの方をほとんど見かけないのも、たいへんありがたく思っています。

(5)歯科医師は免疫が強い?
 歯科治療を行うことで、飛沫を浴び、吸い込みますので、普段から様々な病原体が体に侵入してきているはずです。それがワクチンのような効果を生み出しているならいいなあと、思っています。科学的根拠はありません。

(6)普段から病原体の付着を意識している
 診療時には手洗いをしてグローブを装着します。グローブを付けてから触れた物は、常に頭の中に入れて行動しています。私だけかもしれませんが、日常生活でも同じことをしています。買い物に行ったときに、左手は消毒済のカゴを持っただけなので おそらく清潔、右手は何点か商品を触ったので病原体付着の可能性あり、などということをしているようです。そういった理由で、接触感染が少ない可能性はあると思います。

 医療従事者ではない方も、三密を回避するとともに、自分の手が清潔か不潔かを意識するだけでも感染を減らすことができると思います。外出時だけでも意識してみては いかがでしょうか。

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